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明朗塾における公文式学習活用の意義

1 公文式学習導入の経緯

 平成11年8月、明朗塾開設以来、入所顧客が家族との関係を失わないよう月2回家庭で過ごすことをご家族にお願いしてきた。明朗塾と家庭との行き来は、できるだけ独力で公共交通機関を利用することを掲げて「帰宅訓練」と称することとした。実際この帰宅訓練を始めてみると、独力で帰宅できない顧客が見受けられた。その中に文字が読めない故に、の顧客がいた。
 文字が読めない方に読む訓練を行うきっかけは、まとめて平成12年3月発行の広報紙「めいろう」に掲載した。

「学習を見直したい」

施設長 内 藤  晃

 少し古い話になるが、1988年東京で開催された第16回リハビリテーション世界会議で、英国、マンチェスター大学のピーター・ミットラー特殊教育学教授が『知的障害を持つ人々の特殊教育に見られる国際的動向』(International trends in special education of persons with intellectual disabilities)というレポートを発表している。

 下は、その抜粋である。

学校卒業後は?

 西欧諸国では子供は16歳くらいで学校を終えると考えられていたが,今日では 20代の初めかそれ以降まで全日教育を受け続ける若者が増えてきている.だが西欧でも,知的障害をもつ子供のほとんどは16歳くらいで学校を終えるが,この年齢は子供が学習への真の興味を示し始め,基本的な教育技能習得で進歩をみせる頃である.学校卒業者の多くの知的成熟度はある点では5~6歳の非障害児の知的成熟度と同程度なので,これは驚くに当たらない.
 知的障害をもつ人々は,その希望があれば一生涯教育を受け続ける機会を得て学んでいけるようにする必要がある.ここでも他の成人と別でなく,地域社会の教育プロジェクトに参加できるような援助が必要である.地域センターや大学,成人教育施設,職業準備教育,職業訓練など知識技能向上のために人々が集まるどんな場でもよい.これは今後数10年間に我々が取り組まねばならない大きな課題である.

 養護学校を卒業し、また就労体験をもち、あるいは他施設での生活を経て明朗塾を利用するようになった塾生の多くは、「知的好奇心」を抱いている。
 「18歳以上の知的障害者であって雇用されることが困難なものを入所させて、自活に必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させることを目的とする(知的障害者福祉法第21条の6)」授産施設では、[1]自活に必要な訓練の実施、と[2]自活のために職業を与えることがその主たる目的となるが、いきおい就職に直接結びつく職業教育・職能教育にメインがおかれ、自活に必要な訓練の実施は施設の姿勢に依拠するきらいが見られる。もちろん施設により独自の訓練プログラムが用意され、大いに効果がみられるのも事実である。
 ここで、[1]と[2]の大きな違いについて確認しておくと、[2]の効果に対する評価は、就労人数により明確に客観化できる。しかし[1]の効果に対する評価は、[2]に付随することでわずかに効果測定できる程度で、[1]独自の評価は客観化しにくいということである。それは、当然施設の処遇内容が 100%公開されていないことによるばかりでなく、訓練プログラムが施設によりバラバラであることにもよる。
 ただここで、だから自活に必要な訓練の内容を統一すべきだというのではない。評価が明確にできないことにより、その内容が軽んじられてはならないということである。
 明朗塾では、「学習」を自活に必要な訓練として据えようと考えている。「この年齢は子供が学習への真の興味を示し始め,基本的な教育技能習得で進歩をみせる頃である.学校卒業者の多くの知的成熟度はある点では5~6歳の非障害児の知的成熟度と同程度なので,これは驚くに当たらない」という上記レポートが示すとおり、5~6歳の小学校就学前後は相当大きな知的好奇心を示し、様々な知識を習得する時期である。にもかかわらず、学習(いわゆる国語、算数などの教科学習をここでは意味する)の機会が「就労訓練」という言葉の前に霞ませてはならない。
 「読む・書く・計算する」能力の育成なしでは就労はおろか、自活していく上で不可欠なありとあらゆる情報を収集し加工し処理することさえ不自由する。(もちろん、基礎体力の養成と運動能力の涵養により積極的に健康管理する能力も表裏一体の関係である)
 現在、近隣の養護学校等に協力いただき、養護学校での成果をスムーズに引き継げるような学習プログラムの作成に取り組んでいる。皆様のご意見をぜひお願いしたい。

(めいろう3号 2000/3月刊)

 生活指導、作業訓練と同等に「学習指導」を行うべきことをこのときから追求し始めたのである。
 養護学校を見学したり、書店でドリルを購入しそれを活用したり、試行錯誤する中で「授業形式でなく自学自習のスタイル」をとる公文式学習こそが知的障害児者に、そして明朗塾に最適との結論に達し、明朗塾開設1年目にして、公文式学習に取り組むこととなった。

2 公文式学習の理念

 公文教育研究会が発行する『生きる力 教育が未来を創る』2004.4 によると「生きる力とは、夢や目標を持って、自分から意欲的に何かに挑戦し続け、いきいきと目を輝かせていける力のことであり、そのためには「高い基礎学力」と「自己肯定感」と「自ら学ぶ力」が欠かせない」とある。
 高い基礎学力があって、自己肯定感(何かに挑戦しようという気持ち、やればできるはずだという気持ち)が生まれる。自己肯定感があるからこそ将来の夢を描くことができる。その夢や目標を目指す過程で、自ら学ぶ力が育つ。この自ら学ぶ力とは、集中力や忍耐力、挑戦力などいろいろな力が総合したものである。

3 高い基礎学力

1 読み取る力……… 言葉で表された情報から読み取る読解力・聴解力
              数字や数式で表された情報から読み取る数学的分析力
2 考える力………… 読み取った内容を関連づける論理的思考力
3 伝える力…………  論理的思考を他人に伝える表現力

数学的分析力と論理的思考力は、社会での様々な問題解決に役立つ重要な力であり、数学においては、計算力がその鍵をにぎる。

(『生きる力 教育が未来を創る』2004.4)

4 個人別学習法

 生きる力を身につけるために最も効果的な学習方法が、個人別学習法である。個人別学習法は、一斉授業による受け身の学習でなく、年齢や学年にも関係なく、一人ひとりが自分の学力にちょうど合ったところを個人別に学習する
 個人別学習とは、マンツーマンで学習することではない。一対一であっても一方的に教えられている限りは、自分の力で学習できているとはいえないからである。教えられているのではなく自分の力で学習できている状態が個人別学習である
 これを可能にするには、二つのことが欠かせない。
 1 自分の力で学習することを可能とする教材と学び方。……ちょうどの教材
 2 自分の力で学習することをサポートする先生。

(『生きる力 教育が未来を創る』2004.4)

5 明朗塾における公文式学習の意義

 顧客の人生設計を保証するものである。顧客の権利擁護そのものである。
 学習は、積み重ねであるが同時に基礎体力づくりに通じるものがあり、スポーツと同様繰り返し訓練が必要となる。