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4 地域ネットワークへの模索

4−1 授産事業と地域ネットワーク

 障害者本人が、働く誇りを実感するためには、授産事業で製造販売する(明朗塾の場合は)「パン・野菜等」が地域の人々の生活に欠かせないものであることを伝えなければならない。授産事業を通じて地域の人々にお買いあげいただくことは、一方的に障害者が支えられているのではなく、その逆もまた事実なのである。
 この意味で、授産事業の展開においては地域とのネットワーク構想が不可欠である。


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4−2 プライバシーと地域ネットワークの整合

 地域とネットワークを構成するにあたり、個人情報保護の視点がこれからは重要になる。平成17年4月に施行される個人情報保護法に規定される「個人情報取扱事業者」とは特定の個人情報が取扱データベースにおいて5千件以上の者に限られる。しかし今後政令が改正されれば福祉事業者も法律の規制の対象となる。また現在は法規制がなくても、それをもって個人情報の取扱不備が免責されるわけではない。

 いったん個人情報が漏洩したとき、経営者として利害関係者に説明責任が果たせるだろうか。個人情報の漏洩に対する脆弱な取り組み姿勢(職員を信じていた等)に対して、被害者の目で見れば最善を尽くしていたと思えないだろう。

 ここで改めて個人情報保護の重要性を確認したい。(注12)(注13)

 4−2−1 顧客(障害者およびそのご家族)の個人情報
 地域生活への移行は、現在潮流となっている。障害者のプライバシー保護に関する支援は、重要な権利擁護のテーマである。個人情報・プライバシーと本人は切り離せないものであり、本人支援・権利擁護の名の下に不十分な情報管理をすること、あるいは不用意な情報共有体制を築くことは、知らず知らずのうちに個人情報漏洩になる。
 個人情報とはどういうものか。
 個人情報とは、プライバシー(趣味・交友関係・予定等)より範囲が広く、個人情報保護法では「生存する個人に関する情報であって、当該、情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」。(注14)
個人情報に該当する事例

  1. 本人の氏名
  2. 生年月日、連絡先、職位・所属に関する情報と本人氏名との組み合わせ
  3. 防犯カメラに記録された映像情報
  4. 特定の個人を識別できるメールアドレス
  5. 雇用管理情報

個人情報データベースに該当する事例

  1. 電子メールソフトに保管されたメールアドレス帳
  2. 他の職員に検索可能な状態となっている名刺情報

 以上の例は、個人情報のすべてではない。こういうものも個人情報となるという例である。
 また顧客名簿(製品販売先リスト等)個人情報を個人から取得する際には利用目的を特定しなければならない。利用目的を超える場合は本人の事前の同意が必要となる。利用目的の特定においては、単に「事業活動」「お客様のサービス向上」等では特定したことにはならないことにも注意が必要である。

 4−2−3 情報開示制度への対応を検討する
 情報開示もまた企業へ求められる社会的責任として避けて通るわけにはいかない。施設に対して本人のご家族をはじめとして情報開示が求められたとき、どのように対応するかあらかじめ検討しておかなければならない。(注15)
 情報開示を求めてきた人物に関して、本人特定はどうするか。文書、電話、HP、面談それぞれの場合に応じた手順を決めておく必要がある。本人確認をした証拠が残るから文書がベターとも考えられる。(注16)
 施設内における集団生活では複数の障害者が関わるケース(トラブルを含めて)が起こる。この場合、何らかの損害賠償が発生する可能性がある。特にこのような場合、自分の意思表明を十分に行えないという障害特性を考慮するならば、できるだけ客観的な記録を慎重に残さなければならない。このようなことを前提にケース記録書の記載方法について、本人への情報開示を前提としたルール作りも必要である。

 4−2−4 経営者責任を考える
 個人情報保護法は、管理責任を尽くしたかどうかを問う法律である。内部犯に対する処罰規定はない。そもそも「情報を窃盗・横領」という罪状がない。背任罪を構成させるには職員に信任している内容がまず明確になっていなければならない。
 不正アクセス禁止法は、社外員が社内員を装うときに適用される。内部犯はそもそも正規アクセスなのだから規制の対象外となる。
 職員に対する信頼はもちろん重要だが、個人情報保護のためには「信頼」の名の下に管理を懈怠することは許されない。
対応の方針として、

  1. 個人情報の範囲を狭めようと考えることはやめる……事業者の判断(これは個人情報ではないという身勝手な判断)より市場の判断(情報を漏洩させた杜撰な施設という評価)が優先される。
  2. 管理できないから個人情報とはみなさない、という考えはやめる。管理できていないなら、利益を生んでいない(損失しかない)のであるから、即座に消すべきである。

 授産事業の展開のみならず、障害者の地域生活支援のために地域とのネットワークを構築するうえで、この個人情報の取り扱いについても単に「本人支援のため」という理由は今後通用しなくなる。プライバシー保護の観点からあらためて経営者責任を見直したい。(注17)


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