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3 オプションサービスに関する考察

 障害者本人が家族や友人、地域から愛されていることを実感するには、一緒に時間を過ごすためのサービスが必要となる。お客様が自ら幸せな時間をたくさん作るために、身体面・精神面・生活面の自己管理の支援や充実した余暇を過ごすためのサービスが必要になる。
これらのサービスを「オプションサービス」として提供し、支援費制度を補うサービス選択の幅の拡大を図るべく考察する。
 支援費制度においては、障害基礎年金を使ってサービスを購入する。一般的に授産施設サービスならば、一般就労が見込めるところ、工賃が高いところ、がよいはずである。オプションサービスにおいても同じ買い物ならば顧客満足度が高いサービスが歓迎されるはずである。

3−1 顧客要求を「わがまま」と切り捨てないためのビジネスモデル

 支援費制度において、施設サービスは「施設訓練等支援費」により利用できる。応能負担となる自己負担金があるが、一定量の(一定枠内の)サービスはこの「基本料金」内で提供を受けることができる。(注3)
 しかし顧客ニーズは常に変化するものであるから、サービス提供側が常に新しいサービスを提供し続ける姿勢を持たない限り、次から次へと新しい要求を受けることになる。
 サービス提供側に求められる姿勢はいつでも能動的active である。何かが起こる前に行動を起こす姿勢が求められる。しかし多くの場合、受動的passive な対応に終始してしまうものである。何かが起こってからその対応に追われるという構造である。この受動的な姿勢につきまとう悪しき思考が「顧客はわがまま」という見方である。顧客ニーズの変化に「対応」(これも受動的である)するのに精一杯だと、顧客ニーズを「わがまま」と切って捨てる思考が頭をもたげる。
 経営学では「供給が需要を引き出す」という理論があるが、小売業の業績アップには品揃えの充実が大切である。(注4)
 しかし品揃えの充実は「顧客ニーズ」の把握だけ、待ちの姿勢だけでは作れないのである。
 そこで新しく、「基本料金」内のサービスのほかに「オプションサービス(追加料金サービス)」の提供をし、このオプションサービスを提供した職員に「サービス提供手当」を支給するビジネスモデルを考案した。追加サービスを提供すればするほど手当額が増えるというシステムである。
 ただしこの場合、サービス提供手当を「給与規程」のなかにどのように位置づけるかは重要である。勤務時間内にあれば、正規の「給料」が支払われているし、勤務時間外であれば「時間外手当」を支払うべきである。サービス提供に関して顧客と職員との直接契約という形態をとるとすると、職員の職務専念義務の問題や事故時の対応に苦慮することになる。
 そこでオプションサービスを「職員の資質向上のための研修時間」と位置づけて「研修手当」を支給することや人事考課の対象に位置づけて「一時金(ボーナス)」を支給することでの解決を模索しているが、まだ結論はでていない。
 なお、費用徴収が可能な「指定施設支援サービス(支援費サービス)以外のもの」であっても、「授産施設支援における費用徴収の具体的な取扱(ガイドライン)」によれば「実費相当額範囲内」という受領基準があるため、オプションサービスを社会福祉法人が提供する場合には一定の制限があろう。これは社会福祉法人の存在そのものがそもそもセーフティネットとして位置づけられていることにも由来する。個人が個別に望むサービスは、当該個人の負担となるものの、施設利用者全員が受けるサービスは、社会福祉法人においては公費(支援費等)による報酬によりまかなわれるべきであるからだ。この施設利用者が公平に受けられるサービスを超えて、個人の生活を豊かにするサービスを積極的に追求しようとすることが、ここでのオプションサービスの目的であるが、社会福祉法人の本来の役割を逸脱する危険性を包含する。
 したがってオプションサービスを展開するならば、社会福祉事業とは別に一般事業(収益事業)として提供する枠組みを検討しなければならない(たとえば株式会社の設立)。または、社会福祉法人が地域資源と連携してその力を活用し、障害者の生活を豊かにするサービスネットワークの形成を模索することが今後必要になろう。このネットワーク形成の局面においては、社会福祉法人がもつ障害者支援の専門性(ケアマネジメントやサービスコーディネートなど)を十分に発揮することが特に重要になる。
 本稿ではサービス提供側が常に新しいサービスを提供し続ける姿勢を持つことが不可欠という基本認識からオプションサービスの企画開発の経緯を報告する。ここで追求するビジネスモデルは顧客のサービスニーズを積極的に受け入れ、さらには引き出す仕組みを作り上げようという目的をもつ。(注5)(注6)(注7)


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3−2 価格設定方法 

 オプションサービスの開発には、ISO9001の規格から設計開発の手順を採用した。すなわち、サービスに対する要求事項として、

  1. 顧客要求事項
  2. 規格要求事項
  3. 社会的要求事項

の三つの側面から把握して、それらを設計開発のためのインプット情報として整理する。これに基づき設計を行うが、設計に基づくアウトプット(新サービス企画書 下表参照)が、設計によって確実に作り出せるかレビューし、インプット情報がきちんと反映されているか検証し、アウトプットが要求事項を満たせるかどうか妥当性確認を行う。それぞれに実施記録と承認記録を残す。問題がなければはじめて、オプションサービスが提供されるのである。
 価格の設定には、コスト分析が行われる。職員の人件費、消耗品等の一般管理費、外注費、減価償却費そして利益率を盛り込み最終の提供価格を決定するのである。
 ここで利益率の設定が重要になる。明朗塾では、提供職員がどのような資格や能力をもっているか、その能力がサービスの提供にどの程度関与するのか、言い換えれば特定の職員でなければ提供できないのかどうか、によって利益率を10%から40%の範囲で決定している。高い技能が不要であれば10%、高い技能(資格)を必要とするものであれば40%となる。
 また、人件費も最低賃金(千葉県では時給678円)で計算するのではなく、標準的に提供する職員の時給相当額によって算定する。1時間あたり1,500円から2,500円程度までコストの幅は広がる。
 したがって、価格は一見高価である。(3−4 オプションサービス一覧表参照)

[サービス企画書のフォーマット] (略)


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3−3 企画における顧客満足の追求

 3−3−1 損をさせない工夫
 オプションサービス開発中の職員が感じた疑問は、「価格が高すぎるのではないか」であった。ではどうするか。損をしてまでも価格を引き下げればよいのか。
 「価格が高い」というのは言い換えれば「価格に見合うだけの価値がない」ということである。だから、価格が高く感じるのであれば、少なくとも感じなくなるまで価値を高める努力をすべきである。この努力をした上での価格引き下げは構わないが、努力をしないでただ単に価格を下げるのは消費者を尊重していることにはならない。
 『歩くぞ万歩』は現在、一番売れている商品であるが、一番の工夫は毎日歩き続けられる仕組みと、購入している(歩いている)ご本人のご家族が安心できる仕組みを取り入れたことである。
 『クッキング・タイム』も単なる料理教室と違う点は、写真とレシピを配付し、自分で繰り返し使えるところがポイントである。料理は「食べ終えたとき」が一番満足する。しかし数時間すればその満腹感は忘れてしまう。食欲に限らず、人間は様々な欲望を満足したままにしておくことができない。しばらくすれば、おいしいものを食べた経験は薄れていき、お金を支払った記憶だけが鮮明に浮き彫りとなっていく。食べていないご家族は「無駄遣い」と感じるだろう。ではどうするか。食べてしまった料理はもうそこにはない。ではいつまでも残るものは何か。いつまでも残せるものとして何を作り出せるか。この点が開発の重要課題となる。
 このようにすべてのサービスについて、損と感じさせない工夫を考えた。

 3−3−2 それでもお金のない人は使えないサービスではないか
 導入期にはそれでも仕方がないことではないかと考える。お金がない人、ある人、様々である。お金がない人であっても十分満足できる生活を保証するのが施設サービスである。
 しかしお金があるにもかかわらず、それを使って生活を豊かにするサービス提供を受けられない状態を放置していてよいのか。
 携帯電話(当初は移動自動車電話)サービスが昭和54年に開始されたとき、月額基本料金3万円、設備料が8万円、昭和57年には保証金制度が開始され、保証金預託額20万円であった。その後平成5年に保証金制度が廃止されたが、加入料が45,800円、加入料が廃止されたのは平成8年である。現在は電話機の代金を除けば月額4,500円(上記いずれも通話料は別)程度である。
 高い料金を支払い続けた人々がいたからこそ、いまでは小学生までもが携帯電話を利用できる世の中になった。
 お金がある人に対するサービスを「オプションサービス」として提供し続けることにより、そのサービスをもっと多くの人が利用できる時代が来るものと信じている。
 支援費制度は、利用顧客にとって選択の時代であると同時にサービス提供事業者にとっては競争の時代でもある。サービスの「価値」の部分で勝負をしたいと考える。 

  3−3−3 リピートを引き出す工夫
 オプションサービス開発のポイントのもう一点は「マンツーマン」にある。顧客が安心を感じる一番のポイントが「自分だけへのサービス・100%個別対応のサービス」である。
 それとともに、サービス(商品)開発にあたり、リピートを引き出す工夫をした。(注8)
どのようなサービスでもくり返し利用すれば、その効用は下がる[限界効用逓減の法則]。同じサービスを続けることはそれだけで満足感は下がるものである。したがって、サービスのリピート使用(継続購入)を考えるならば、リピートする仕組みを商品に組み込まなければならい。

 3−3−4 目標設定
 オプションサービスの開発に関する目標は、オプションサービスの販売実績額をその指標とした。

販売実績推移グラフ(略)


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3−4 オプションサービス(明朗塾の提供例)

[サービス提供中のオプションサービス一覧 平成17年2月現在]










開発コード

商 品 名

内   容 ・ 価   格

002

歩くぞ万歩

ゲーム感覚で楽しみながら健康管理
【セールスポイント】「歩く」ことを生活の中に取り入れ、生活習慣病予防や基礎体力を身につけ、健康維持・増進を図ります。万歩計を使用して一日の歩数の目標管理を行います。歩数カウントはポイント制で、ゲーム的な要素を多く取り入れ、楽しみながら健康管理ができます。治療食(ダイエットメニュー)と併せて利用することで効果はアップ。(ダイエットメニューの選択には追加料金はありません)
【価格】月3,000円 最少催行人数10名

003

ファイナンシャル・
プランニング

ゆとりのある生活のために
【セールスポイント】人生設計において収容な要素である「お金」。このサービスは現在の生活の収支を明確にし、多くの顧客が望む「就労」「自立」「一人暮らし」を実現するために必要な「お金」の面からの生活設計のご提案を行います。現在の収支状況と条件を一定にしたときの今後10年間の収支推移は『無料』でお渡しします。(ご希望者のみ)そのあと、提案書(具体的プラン)作成や日常金銭管理支援のサービスを提供し、個別の希望(例:グループホームでの生活)を具体化させます。
【価格】提案書作成25,000円 金銭管理支援サービス年間72,000円

004b

クッキング・タイム

季節の料理を楽しみながら料理の基本を学びます
【セールスポイント】お料理に合わせた音楽を聴きながら、料理の基本から簡単な応用知識・技術を習得できます。自立生活における健康管理の基本は安定した食生活です。特に季節(旬)の食材を使った料理を学ぶことはとても重要なことです。
 栄養成分を併記したレシピと、実際に調理した料理の写真をお渡ししますから、何度でも自分でまたはご家族で楽しみながら料理することができます。
【価格】3,300円(1回あたり食材費込み)最少催行人数3名

005b

ファッションコーディネート
Ver.2

マンツーマンで衣類の購入のサポート
【セールスポイント】自分で衣類を選んだり買ったりすることが苦手なお客様に、職員がマンツーマンで衣類の買い物に同行します。季節や流行の衣類を予算に合わせて購入することができます。
同行職員のセンスが活かされ、計画的なショッピングが可能になります。衣類の選択の幅が広がります。マンツーマンで同行する職員は、お客様やご家族の方が選ぶこともできます。食事付きプランを追加しました。最少催行人数1名
【価格】4,700円(1回あたり/成田市内の場合・交通費込み・食事なし)
     8,300円(1回あたり/成田市内の場合・交通費込み・食事あり)

006

資格を取ろう
ホームヘルパー2級

マンツーマンサポートで安心取得
【セールスポイント】ホームヘルパー2級資格の取得を目指すお客様に提携スクールまでの送迎(全12回)とレポート作成等の徹底アドヴァイスを行います。資格取得は就職への第一歩となります。特にこのホームヘルパー2級資格は高齢者施設や在宅介護事業者への就職に有利になります。お申し込みにあたり、十分なご相談をいたします。
【参考】受講料金83,000円
【予定価格】64,000〜130,000円(受講料は含みません)最少催行人数1名

007

施設長と語る
明朗塾母親懇親会

食事を楽しみながら語り合います
【セールスポイント】明朗塾を利用される顧客のご家族、今回は母親が参加の対象です。施設外の会場にて昼食をとりながら、施設長からは施設運営の考えを、母親のご参加者様からはわが子に対してのお考えをじっくりと話し合います。2ヶ月に1回のペースで開催されます。
【価格】17,640円(1回あたり/食事代含みます)各回限定10名

008

四季旅行

小グループでの小旅行
【セールスポイント】その季節を感じる景勝地・観光地を、小グループ(最大でも3人)で旅行します。職員が同行サポートします。景色を楽しみ、土地のおいしい食事を楽しみます。旅行に参加した方には、旅のしおり・アルパムをプレゼントいたします。思い出の1ページを作りましょう。
【予定コース】養老渓谷編 平成16年10月31日・11月7日
        大洗編    平成16年9月26日・10月3日
【予定価格等】未定 最少催行人数3名  申し込みは催行日の2週間前まで

012

居酒屋で一杯!

週末、気の合う仲間と居酒屋で楽しいひとときを
【セールスポイント】(通所顧客限定サービス)成人であれば誰でも参加可能。内服薬を常用している方でもソフトドリンクのみでの参加も可能。ご家族の参加も歓迎します。同行職員が「飲み過ぎストップ」をしますから安心です。またご自宅までの送迎付きです(送迎職員は飲酒しません)。
【価格】6,500円 最少催行人数3名(定員も同様)

014

外出同行サポート・
映画を見よう

夕食セットでゆったりプラン
【セールスポイント】平日(休前日)の夕方(作業後)に施設を出発して、夕食と映画鑑賞を組み合わせたプラン。送迎サービスと食事と映画鑑賞(パンフレットを含みます)が料金に含まれます。
【価格】6,700円(参加者数3名の場合)最少催行人数3名(定員も同様)

020

施設長による
一般常識・マナー講座

歴史や政治経済から社交マナーまで
【セールスポイント】就労を個別支援計画に含めている方を対象に授業形式で、社会人として必要な一般常識・マナーに関する講座を開設します。1講座につき3回(各60分)で、理解度を確認して修了証を発行します。わかりやすい教材プリントもお楽しみに。
【予定価格】4,200〜6,800円(1講座(3回分)あたり)最少催行人数10名

022

湯った〜り!

日頃の疲れを癒しましょう!
【セールスポイント】いまスーパー銭湯といわれるリラクゼーションを売りにした新しいスポットが増えています。たのしいお風呂のひとときも実は危険が伴います。このサービスは、お客様1名に対し、同性職員が1名マンツーマンで対応しますから「安全に」楽しむことができます。
1,「湯った〜り!」3時間コースはお風呂を楽しみたい方におすすめです。ソフトドリンク付き。
2,「まった〜り!」4時間コースはお風呂のほかにソフトドリンクと食事付きです。
【価格】? 6,500円 ? 10,000円  最少催行人数1名

023

フィッシング!

釣り好き集まれ!
【セールスポイント】自称「明朗塾の釣りバカ」職員が手取り足取りで「釣りのイロハ」を親切・丁寧にご指導いたしますから、釣りの未経験者でも大丈夫。休日を利用し釣り堀や、川などでフィッシングを楽しみましょう。毎週土曜日に開催します。新しい余暇の楽しみ方を追求しましょう。
【価格】5,000円 昼食・ポラロイド写真、釣り堀入場料・貸釣り竿代込み

024

生花教室

趣味&才能発掘!?サービスゆとりのある生活
モニタリング12月4名様実施


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3−5 オプションサービスにさらに求められる要素

 障害福祉サービスが、そのサービスを提供する「人」すなわち職員の資質に大きく依存することはいうまでもない。オプションサービス企画開発において考慮すべき要素は、オプションサービスの企画開発とそのサービス提供の双方に「人が育つ」・「職員の資質向上」の仕組みが含められるかどうかである。(注9)
 ゆえにオプションサービスの企画は、職員が自分の得意とする分野で展開される。(注10)(注11)
 また、地域資源を積極的に引き出し活用することで障害者の余暇活動を含むゆたかな生活設計の支援体制(サービスネットワーク)を構築する方向性も重要な要素として含められる必要がある。


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