1 『明朗塾は、顧客が働いて自立することを支援します』

 顧客が、明朗塾のサービス、サービス提供スタッフ(職員)に共鳴する人の集団とならなくてはならない。職員もまた使命感を持ち明朗塾で働くことにプライドを持たなければならない。この構造が明確であればあるほどいわゆる「明朗塾ブランド」が見えていることになる。

1−1 品質方針を見直します。

 顧客が働いて自立することを支援するという原則をコミットメントするためにも、現在の品質方 針の表現を改善します。
 そして、その品質方針の変更にともない各プロセスの品質目標を見直します。

1−2 顧客の個別支援計画を見直します。

 顧客の「働く意志」と明朗塾の「顧客が働いて自立することの支援」の具体的な内容は「個別支 援計画書」の中に表現されます。個別支援計画は、単なる方針にとどまらず支援目標(計量・測定 可能な数値)が含まれます。その結果、明朗塾支援が変わることになります。例えば「十分な余暇 支援を行います」という支援目標では具体的に何をしなければならないかが見えてきません。しか し「毎週一回の余暇支援を行います」という支援目標ならば「今週は余暇支援として何を行ったか」 がケース記録の対象となります。また余暇支援が行えなかったときはインシデントとして必要な処 置を行う対象となります。言い換えれば明朗塾の支援が変わるような支援目標でなければ実効性は 認められないということになります。

1−3 授産事業を黒字化します。

 働いて生計を立てるとは、生計の収支を黒字化することです。明朗塾の授産事業の不採算部門の 改善に取り組みます。必要であれば引き続き船井総合研究所の支援を受けます。収益力のアップに より月間工賃の前年度150%支給を達成させます。またボーナス工賃、有給休暇制度等の運用に よる作業意欲の喚起についても制度・仕組みとして引き続き改善を行います。

1−4 企業内企業を設立します。

 最低賃金(677円/時間・千葉県 平成16年1月現在)を保証すること、地域の在宅知的障害者 支援の体制を熟成させること、を方針とした企業内企業(有限会社またはNPO法人)を設立しま す。
 支援費(自己負担金を含みます)を事業者に支払いながら、工賃を受け取るという矛盾をはらん だ現在の構造を、給料を受け取りその収入から必要な能力開発・余暇活動に関わるサービスを購入 するという構造へのシフトを視野に入れた諸活動を行います。
 MEILAND(めいらんど/障害者地域生活支援室MEIが企画するイベントをはじめとする 在宅障害者支援の実施主体)の多角化(障害児学童保育を含む)を進めます。

2 権利と義務について

 権利(自由)は、その人の果たす義務の度合いに応じて増します。月10万分の労働義務を果たせば、10万円を受け取る権利が発生し、その権利に基づき10万円を自由に処分する(消費する)自由がそこに発生します。また月10万円分の労働と、月20万円分の労働では、その労働を提供する労働者の義務の度合いは異なります。
 もちろんまったく義務とは関係なく、人間として生まれたときからもっている権利もあります。(これを基本的人権といいます)この基本的人権を「保障する」ということについては歴史的に見れば様々な獲得運動があったことは容易に理解できるでしょう。さらに権利擁護というときにはこの基本的人権の保障を全ての人間関係の営みの場面において基礎において検証し続けるということです。
 ここではこの基本的人権の先にある(厳密に言えば基本的人権と全く別ということにはなりませんが)権利獲得を考えていきます。権利そして自由はより大きく、より広く、より深くあれば人生はより豊かになるといえます。したがって、この人生を豊かにするための権利獲得の支援をすることはすなわち義務を果たす能力の涵養です。現在「障害者を納税者に」というスローガンで先進的な(福祉の分野では先進的でも一般常識で考えれば全く低レベルであることをここで確認して下さい。会社が月収10万円を保証しますといったときどれくらいの人がそこに殺到すると思いますか。障害者がその能力を発揮する場面がいかに開発されてこなかったかということを改めてかみしめる必要があります)取り組みがありますが、この運動も義務(納税義務)を果たす能力の涵養のための支援です。
 明朗塾は常にこの権利獲得の構造を理解した上で必要な支援を行います。

 自由について、J.S.ミルは『自由論』において、個人は他人に危害を与えない範囲において自由であるとした(危害原理)。他者に危害を与えるという自由はないのです。自由や権利を考えるとき、その前提としてこの危害原理から、危害をなさない能力が問われます。(寺本晃久「能力と危害」『障害学の主張』p223、明石書店、2002.10)
 「障害と危害の結びつきが問題とされ、それらは単純に結びついているのではないと注意深くひきはなそうとする努力がなされてきた。しかしなお、自由や権利の前提をその能力によって満たすことができないもの、あるいは危害(の可能性)によって自由や権利の外に置かれてきたものについて、いかに語ることができるのか? たとえば自らを害する行いについて、あるいは「迷惑をかける」という行いについてはどうか? だが、そもそもの問題とされる「危害」とは何か? 何の「危害」が問題とされるのか? 「危害」はどこに帰属されるのか? 「能力の欠如」とは? こうした問題をひとつひとつ取り上げて検討していく必要がある。(略)「障害」や「障害をもつ人」が問題なのではなく、「障害」や「障害をもつ人」と危害に対する我々の認識や取扱いが問題ではないか。」(前掲書 pp224-225)

3 障害と個性について

 障害と人権をきちんと分けて考えることはたやすいことではないのです。障害は否定する、しかし障害者の人権、人格は否定しないというスタンスを明朗塾はとります。このあたりの議論を怠けると「障害は個性である」という考えを持ち、障害が個人の生活と活動を制約する面をもつ属性であることを過小評価し、それへの支援に手を抜くことになりかねません。「個性だからいいんだ」と。
「障害はなんといっても個人の生活と活動を制約する面をもつ(その意味で負の影響を及ぼす)属性であり、その制約は意識のうえでいかに軽く位置づけて見たところで軽減したり解消したりするものではない。それゆえにこそ、障害者は健常者にはない特別なニーズをもつのであり、その充足の方策の提供を社会に向かって要求する権利をもつ」(『障害は個性か』茂木俊彦著 p31、大月書店 2003.10)という考え方こそ、明朗塾の支援の道筋を明らかにするヒントになります。
 「哲学者、竹内章郎氏は「個性の問題化のために」と題する論文において「当該個人の属性それ自体がすべて『個性になる』わけではない」と述べている。個性という概念は単に当該個人に内在するものという次元で成立するものでも、当該個人の「自己規定」として成立するものでもないという。これは個性概念は社会構造を含めた他者による肯定的価値としての承認といった他者規定があたえられてはじめて成立するのだ」「竹内氏は、障害を個性だと主張する論は主観主義で恣意主義だと批判している。これらの論の多くが「障害=個性」論を観念的にまた、啓蒙主義的に説くのみ(観念を変えろ!のみ)だからであり、言い換えれば「障害=個性」を承認する心性がいかにして可能になるのか、そのための社会と文化のあり方はいかに、といった議論と相まってしか、この発想は意義を持ち得ない、にもかかわらず、そのような議論はほとんど全く行われていないからだという」(前掲書 pp29-30)
 明朗塾の支援サービスのお客様の人権、人格を否定しないということは、口で言うほどたやすくなく、いとも簡単に差別意識が入り込みます。したがって、自由や権利をどのように要求していくか能力をどう引き出すかを考え続け、安易に「個性だ」と決めつけることは、決して人権尊重に直結するのではなく支援の放棄やスモールガバメントをめざす行政のお先棒担ぎになってしまうことを鋭く見抜かなければならないのです。周囲の人が眉をひそめるようなある言動を「これはこの方の個性です」と説明するだけでは不十分で、周囲の方がそれを受け入れられるような説明ができなければ安易に「個性です」は使ってはいけないのであり、むしろそれへの必要な支援を得られるような働きかけを続けることこそ明朗塾がとらなければならない支援の姿勢といえます。

4 顧客満足の分析について

 「顧客満足度の測定は、難しい演奏を終えた後で奏者が受けるスタンディングオベーションの長さを計測するようなものである。演奏者は、賞賛されれば喜び、それが少ないとがっかりする。しかし、どうすれば観客をもっと喜ばせることができたかについては、そこからはまったく知ることができない。観客からもっと賞賛してもらうために、演奏者は、観客が演奏に期待していた価値がなんだったのか、演奏のどういった要素がそのような価値をもたらすことができたかを突き止める必要がある。本当の狙いは顧客バリュースペースである」(『バリュースペース戦略』バン・ミッタル、ジャグ・シェス著 p16、ダイヤモンド社 2004.2)
「顧客満足は「結果」であって、事業活動ではない」「顧客満足よりもむしろ顧客価値にある」(前掲書 p8)
 PDCAサイクルからこのことを見てみると、顧客満足度の測定はC。その結果から必要なAを実施するだけで、事業活動は十分な効果を持たないわけです。明確なPの設定がなければ企業の資源を最大限に活用したDは期待できない。
 そこでPを設定することを「顧客バリュースペースをどのように構築し実践するかのフレームワーク求められている」(前掲書 p10)と理解する必要があるのです。P設定の必要性とそれでいて困難なことは今までも何度か述べてきました。今回この部分の有効な解決の手法として『バリュースペース』の考え方を見ていきます。バリュースペースは価値観と考えることができます。ここで重要なことはたんに「顧客の価値観は何か」ではなく「顧客の価値観をどのように構築するか」という姿勢にあります。「価値観は何か」であれば満足度調査で分かります。「価値観をどう構築するか」は満足度調査では分かりません。ここに違いがあります。
 バリュースペースを構成する要素は3つです。パフォーマンスと価格とパーソナライゼーションです。
 パフォーマンスとは、期待どおりかそれ以上の役割を果たす製品やサービスです。
 価格とは、公正かつリーズナブルな価格です。一定のパフォーマンス価値を果たす製品やサービスに対して、顧客が支払う最も低い総コストですが、業務の信頼性のレベルに見合った価格をという面は見逃せません。
 パーソナライゼーションとは、企業との取引のしやすさです。単なる「顧客サービス」を超えた、コミュニケーションをもって「たやすく取引できる」状態のことです。温かさを感じる部分です。

 各要素を構成する基礎単位を分析すると、まずパフォーマンス価値には、品質とイノベーションとカスタマイゼーションがあります。品質を保証する考え方で重要なものには、製品・サービスの品質を高めるにとどまらずむしろ企業自体の質を高めるというものがあります。そして品質を高めることが顧客のバリュースペースの創造に直結しなければ、それは目的とプロセスの混同になってしまうということです。
 イノベーション(新しいことの導入)はバリュースペースの拡大に不可欠となります。個人の特別な要求に合うように一般品を改善したり適合させるカスタマイゼーションは高いパフォーマンス価値をもたらします。
 価格は、顧客がどのような価格を分類するかを考えることから始まります。価格に関する分析は、措置費・支援費に関しては「しなくてもすむ」(本当は必要ですが)という状態に長くおかれていた福祉業界にあっては十分な蓄積資料がありません。したがって、一から作り上げていかなければならない部分となります。基礎単位は、ターゲットコスティング(あらかじめ目標となる価格があって、それに見合ったコストを管理するプログラム)とリーン・オペレーション(無駄を省くためのさまざまな行動。具体的にはプロセスの見直し、自働化、供給関連管理、サブ・プロセスなど)です。
 パーソナライゼーション価値の基礎単位は、アクセスの容易さ、迅速な対応、企業と顧客の絆の育成です。

 この全部で、3つの構成要素、8つの基礎単位には階層があります。まず、顧客はパフォーマンス価値を求めます。パフォーマンスを評価してから価格を判断します。そして、パフォーマンス価値と価格価値が適正であると見なして初めてパーソナライゼーション価値を要求するようになります。いくら企業がパーソナライゼーションをすすめても、パフォーマンスの悪さや魅力的でない価格に取って代わることはできないのです。

5 ISOの展開について

品質保証から環境、情報管理へ
 明朗塾は、平成14年12月20日知的障害者授産施設としては日本ではじめてISO9001:2000(品質マネジメントに関する国際規格2000年版)の認証取得を達成しました。現在までに6回の内部監査と2回の定期審査を経て認証を維持しています。施設で提供される福祉サービスの品質をどのように保証していくか継続的改善によって見直しを続けています。ISOの本質は「一定の高レベル水準の保証」ではなく「高レベル水準追求のしくみの維持」にあります。
 この「追求のしくみの維持」は波及効果をもたらすこととなりました。すなわち品質保証から環境、情報管理へという流れです。ISO14001(環境マネジメントに関する国際規格)認証の準備はほぼ整い、すでに明朗塾の品質方針を次のとおり変更しました。

 明朗塾は、すべての人の存在が必要・必然・最善とされる福祉社会の実現に邁進するために障害を科学的に理解し、顧客を全人的に理解します

  • 顧客が働くことで自立した人生を設計する支援をします
  • 法規制等を遵守し、顧客に安全な環境を提供します
  • 顧客に安心していただきます
  • 顧客のプライバシーを守ります
  • 地球環境への負荷の低減に取り組みます

 さらに、要求事項への適合、品質マネジメントシステムの有効性および環境マネジメントシステムの有効性の継続的改善を行います。
『明朗塾品質マニュアル第5版 2004.4.1』

 今後ISO9001とISO14001の統合審査を受け認証取得をします。

 さらに、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の構築を視野に入れます。明朗塾職員(栄養部長兼システム管理部長)の小澤啓洋が研究レポートの中で『ISMSとは、組織の「情報資産」(明朗塾でいう「顧客情報」)の安全性をできる限り高め、災害やシステムクラッシュ、不正アクセス、意図的な社外漏洩、改竄などの脅威、慢性的なリスクから守り、情報の機密性、安全性、可能性を継続的に確保・維持するためのシステム確立を目指すものである。特徴的なことは、民間主体で普及が進んだISO9000・14000シリーズとは違い、経済産業省が情報セキュリティ政策の一環として位置づけているシステム規格である。このISMSは、来年度4月から施行される顧客情報保護法の対応のとしても多いに役立つものといえる。顧客情報(顧客の人格)を守るために、個人情報保護法を遵守するためにISMSを構築させることが、最善の策であると考える。われわれ明朗塾としても、顧客情報を守るために、個人情報保護法とISMSの両方の側面から調査を行い、明朗塾での必要性を検証していく必要がある。われわれが、新たな脅威が目の前に迫っているにも関わらず、国策ともいえる情報セキュリティの対策に取り組まないことは、過失であり問題ではないか。個人的には、今まで不可能を可能にしてきた明朗塾において、また新たな勲章が増えるのかと楽しみにしている。しかし、その一方でどのようにコンセンサスの醸成を図り、全職員参画の基に構築していく体制を整えて行くかが、当面の大きな課題であろう。』(研究レポート「顧客情報(個人情報)を守るために【ISMSの必要性を検証する】小澤啓洋 2004.5)と述べていることからもその必要性は明確です。


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